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「どこに落ちたい?・・・」
"resolution"
覚悟はしていた・・・つもりだった。 次々と送られる追撃者を、ただ撃退するのみという戦いから、敵の本拠地に自ら乗り込むという攻めの戦いに転ずる。熾烈を極めるこの最期の戦いで、全員が無事に帰還するなどというのは、どだい虫のいい話だと思っていた・・・つもりだった。 あの娘が泣いている。 他の仲間とは違う表情、涙。怯えるように、すがるように、ただどうしようもなく、泣いている。 地底帝国での死闘の末、ボクたちはあと一歩のところで肝心の「黒い幽霊」の総統を取り逃がした。基地の自爆装置を作動させ、ヤツらは巨大な魔神像とともに飛び去った。イワンの瞬間移動で脱出できなかったら、ボクたちも終わりだったろう。 ところが脱出してきたこの地上に、9人のはずの仲間が8人しかいない。1人、足りない。 ・・・そう、理屈では分かるのだ。総統を逃せば「黒い幽霊」はいくらでも再生してくるだろう。叩くなら今しかない。もう1人は、ジョウは、そこへ送り込まれた。ヤツらの魔神像の中へ。イワンによれば、その魔神像は宇宙を目指し、今や成層圏へ達しているらしい。 確かにジョウならばやるだろう。総統を倒し、魔神像を破壊し、「黒い幽霊」をこの世から消し去るだろう。それだけの能力が彼にはある。そういう意味でも適任だ。 しかし、そのあとはどうなるのだ?特殊素材で出来た戦闘服は魔神像の爆発から彼を守るかもしれない。人工皮膚は宇宙空間の放射線や極度の減圧状態にも耐えるかもしれない。体内の酸素ボンベで数日間生きられるかもしれない。しかしそのあとは? この戦いに文字通り全てを賭けたボクらには、もう彼を迎えにいく乗り物もないのだ。ともに戦った仲間が、なす術もなくただ死んでゆく。そしてその亡骸は弔われることすらなく、冷たい宇宙をたださまよい続ける。 この空の下でボクらだけが、戦いの去った平和な暮らしを享受する。そんなことには、耐えられない・・・ |
"prayer"
『ジェット!もう遅い!もう間にあわない!!』 そうかもしれない。しかし・・・ ただひとり空を飛ぶ能力を与えられたボクが、黙っていられるはずがないじゃないか。そうだろう? このあと平和な生活が待っているとしたって、ここで何もしなければ、ボクには死ぬより苦しい時間になる。 最後の一秒までチャンスにしがみついてみる。その一秒がすぎたら・・・どうか神よお力添えを! 生まれて初めて・・・・・あなたに祈ります。 「ジョウ! ジョウ! ジョウ、どこだ? 脳波信号をキャッチしたらすぐ返事をしてくれ! ジョウ!!」 あれか!? 前方に翼を広げた人型のシルエットが見える。地底帝国から飛び去った魔神像にちがいない。 その刹那、像の中央から目映い光が発し、赤い火球へとその姿を変えていく。幾多の破片をまき散らし、それは周囲の空間を飲み込んでいく。 ジョウがやった!魔神像もろとも「黒い幽霊」を滅ぼしたのだ! さあ、すぐに彼を見つけなければ。この爆発に巻き込まれるようなヤツじゃない。飛び去っていく魔神像の破片の中、決して見のがすものか。全神経を集中させる。 |
"never let you go!"
いた!! 瓦礫に紛れて飛んでくる、仲間のあかし、真紅の戦闘服に黄色いマフラー。そして見なれた栗色の髪。見のがすはずがない。 爆発で発したエネルギーにのって、かなりのスピードで飛んでくるジョウの体。必死で手をのばす。肩をつかむ。つかまえた!この手を決して離しはしない! |
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「ごらんよジョウ!宇宙の花火だ!「黒い幽霊」の最期だぜ!」 爆発の火球が今、その大きさを最大に膨れ上がらせ、ボクらを背後から照らしている。無言のままジョウは茫然とその光を見つめている。本当にこれで終わったのか? そう言いたげな表情だ。そう、そうだ。ボクらも・・・ |
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「しかし・・・どうやらボクらも最期らしいよ」 『えっ?』 「ロケットの燃料がもうあまりないのさ 重力からの脱出にえらく喰ってしまってね」 重力に引かれるまま猛スピードで落下したのでは、大気との摩擦熱で燃え尽きてしまう。無事大気圏を突破するには、推進剤をふかし、突入角度を一定に保って、ウェイブコースに乗ることが必要だ。 |
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" joe, where do you want to go ?
I can take you anywhere now ! "
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『ジェット!!』 「すまないなジョウ せっかく助けにきたのにさ・・・」 『ジェット!この手を放せ!放してくれ!! きみひとりなら助かるかもしれないじゃないか!』 案の定、きみはそう言うんだな けれどボクはもう、来るときから決めていたんだ。 「そうはいかないよジョウ ボクらは約束したじゃないか・・・・・死ぬときは一緒に・・・・・と」 |
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『ダメだ!ダメだあ!! ジェット!無駄死にしては・・・』 「おっと もう遅い 大気圏突入!・・・ ・・・ジョウ!きみは、どこに落ちたい?・・・」 |
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長く苦しい戦いは終わった。いまこそボクらは自由だ。ジョウ、平和な世界できみはなにをしたかった?どこへ行ってみたかった?どこでもいい。いまからどこへでもきみの好きなところへ連れていってやるよ・・・ |
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